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きである。また、資金面では、行政組織、企業組織が資本提供者と組織内資源がある程度限定されているのに対し、市民セクターはサービスの受益者コスト以外に、助成金、基金、寄付等の多元的財政源を確保することが可能である。さらに、事業活動のアウトプットである財・サービスの性格によって、事業戦略や組織マネジメントは大きく異なり、組織内外の情報網を構築し、有効に活用すれば市民セクターは非常に機動的な組織形態となりうる。
以上のことをふまえ、第3節では実際に市民セクターの活動事例を若干紹介する。なお、今回の実地調査は、あらゆる制約のため特定地域の市民セクターに限定して実施されたものである。したがって本節の議論が類似のサービスを社会に提供している他地域の市民セクターあるいは市民セクター全体に、必ずしも適合するとは限らない。

 

(1) 調査対象
ひとくちに市民セクターといっても、その種類は多種多様で、福祉・医療関連をはじめ、スポーツ振興、環境保護、まちづくり、文化・教育関連団体など幅広い。もちろん、本章の導入部で述べたように、f(非営利組織一非営利活動)のカテゴリーに属する市民セクターを取り扱うのだが、本章ではその中で、国際交流を目的とする非営利組織に焦点をあて、事例研究として紹介する。
今回の調査では?@全国規模の活動範囲をもち、法人格を所有し参加ボランティアも比較的多い青少年の国際交流活動を中心とする団体、?A小規模組織ではあるが、草の根交流を通じて、地域社会との連携を図っていることが想定される団体、?B小規模組織ではあるが、国際交流を通じて小学・中学校教育の補完的役割を担っていると想定される団体、という3団体を調査した。調査対象3団体のうち、2団体は小中学・高校生を対象とする国際交流活動を行っている市民セクターである。そこで子供と学校教育を取り巻く環境について、若干ふれておきたい。
現在、子供と学校教育を取り巻く環境には2つの変化がおきている一まず人口動態の変化にともなう「少子化」である。厚生白書によると、合計特殊出生率は1993年に1.46人まで低下し、その後も依然横ばい状況が続いている11)。核家族化の進行ともあわせて、親の価値観、生活観が子供に強い影響を与えていると考えられる。
もう1つは学校教育における変化である。英会話やコンピュータ導入による授業等、カリキュラムの多様化は進み、また学校全体では、外国人教師の採用、海外への修学旅行・

 

 

 

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